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2021年、新年のごあいさつ

掲載日:2021.01.21

あけましておめでとうございます。新年はじめてのコラムになります。

昨年はちょうど今頃から新型コロナに始まり新型コロナに終わった1年でした。
今はまだ新型コロナの流行は収まらず、不安な毎日を過ごされていることと思います。

当院はゴールデンウィーク以後から千歳して民間初の発熱外来を設置し、地域の皆様の信頼されるかかりつけ医を目指してスタッフ一同頑張って参りました。

発熱外来は屋外テントでの診療から開始され、寒冷期の11月になって断熱仕様のプレハブの診察室を設置しました。これにより一般外来と発熱外来を完全に区分けしたゾーニングが完成することになり、さらに感染対策した診療所となりました。

幸いにもスタッフとその家族にも新型コロナの感染者が発生することなく、開業1年目を終えることができました。これからも患者さんにもスタッフにもより安全な診療所として頑張ってまいりたいと思います。

1.今後の新型コロナの流行の見通しについて

現在は新型コロナ流行の1年目と言うことで、政治の世界も医療の世界も完全な対策ができていません。しかしながら少しずつ治療法やノウハウは積み上げられてきており、またワクチンの接種も始まることから今年から来年にかけて少しずつ希望が見えてくるのではないでしょうか。去年よりも今年、今年よりも来年、来年よりも再来年には患者数及び死亡数もコントロールされてより安心なアフターコロナの世界が過ごせるようになると良いと思います。

2.新型コロナの変異種について

現在新型コロナの編集について広く報道されていますが、そもそも新型コロナと言うからには旧型コロナがあるわけで、旧型コロナは従来の風邪ウイルスの1つです。
ウィルスは感染をするごとに常に変化しています。
動物や植物の細胞に入り込んで分解し、自分のコピーを製造してまた細胞の外に出てきます。その時に寄生した細胞成分や遺伝子のミスコピーによってウイルスは常に変化しているわけです。ですから変異を起こさないウィルスはこの世に存在しないのです。
皆さんにもお馴染みのインフルエンザは毎シーズン流行を繰り返します。ワクチンを毎年打つのに、ワクチンが効く年も効かない年もあるのはウィルスのモデルチェンジに毎年ばらつきがあるからです。
新型コロナ自体が中国の武漢で変異を起こしたウィルスであり、その後イギリスやブラジルで南アフリカで変異が起きても何も不思議は無いのです。
今後日本の東京でさらに大きな変異が起きれば東京ウィルスと呼ばれてもおかしくないのです。
一般的にウィルスが変異を繰り返すと感染力が高まりますが、病原性は弱まる方向に進むと言われてます。それはウィルスがより多くの子孫を残しより多く生き延びるという生存戦略に合致しているためです。そしていずれは一般に流行する風邪ウィルスとして定着してきます。
実際に1905~10年に流行したスペインかぜも、2009年に流行した新型インフルエンザも現在では普通のインフルエンザの中に遺伝子が組み込まれています。
だから新型コロナも流行1年目の今が1番苦しいのです。

3.新型コロナワクチンについて

現在新型コロナワクチンについては世界各国が開発に取り組み数種類が実用化されています。
https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/

全く新しいウィルスに対する全く新しいワクチンと言うことで心配される方もおられるようですが、私は期待を抱いています。
ワクチンだけでなくこの10数年、分子生物学の進歩とコンピューターやインターネットの発達で、臨床薬学の創薬スピードは今までになく速くなりました。それはスーパーコンピューターで分子レベルから設計し応用する技術が完成したからです。特に抗がん剤や、免疫療法の分野ではその進捗は著しく、治療成績も非常に向上しました。
今回新型コロナワクチンとして、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、各社のワクチンが日本でも開始されますが、これらについては国のスケジュールが公表されますので、それを待ちたいと思います。

4.新型コロナに屈することない世界を作りましょう

先日話題の映画「鬼滅の刃」を見てきました。
鬼は時々人間を殺して食べ、恐怖で人間たちを支配しようとします。
人間は鬼の居ない時代に戻る事を夢見続け、逆に鬼に利用されていきます。
鬼は戦う主人公たちに「鬼となって仲間になれ」と言います。
それは身も心も永久に鬼にコントロールされる世界に堕ちることです。

そんな鬼に「人の素晴らしさ」を唱え命をかけて戦う主人公たちに
今、コロナと戦う私たちは強く共感するのだと思うのです。

新型コロナウイルスはまるで「鬼滅の刃」の鬼、世界の独裁者のように振る舞っています。

少数の悲劇的犠牲者を人々に見せつけ、心から抵抗力を奪い沈黙させる様子はまさに独裁です。

我々は好んで感染するわけでもウイルスから選んで感染してくる訳でもありません。しかし発熱をはじめ体調不良の患者さんが発生すると職場学校家族も「証明」を求められます。そうしないと「世間」が患者さんや周りの人達を許してくれません。

発熱外来には病気になった上に、「差別」も背負った患者さんが毎日やってこられます。PCR検査の証明を安心を「世の中の空気」が求めています。

いま、国民の新型コロナへの遣る方無い不満と怒りが、様々なところへ刃となって向けられています。人は人との繋がりを持つ社会性の生き物であり、新型コロナはそれを分断してしまいました。帰省して親孝行すること、気のおけない友人と楽しく会食すること、旅をして新しい世界を知ること、以前なら善とされていた事も今は「社会に後ろ指をさされる」事のように扱われます。

新型コロナウイルスの流行により、他者を潜在的に「危害をもたらす恐れのある存在」とみなす風潮が広がっています。今までいじめ、差別はいけないと教えられた子供達の目に、今の世界はどう映るのでしょうか。大人たちが集団を乱す僅かな行動すら非国民の様に扱うさま、感染を疑われるだけで堂々と「差別」を行う世界をどう感じるのか。
それらが数年続いた時に、人と人との繋がりを信じない希薄な世代が生まれてしまうのではないかと本当に危惧しています。

取り残される弱者が生まれないように政治に期待するしかありませんが、政治も十分に国民の信頼に足る姿を示してはいません。

国民に我慢と犠牲を要求しながら、少数の特権的意識を持つ政治家の行動が信頼を損ねています。彼らを選んだのは国民であり、投票率に代表される我々の政治参加意識の低さが彼らのような政治家を作り出したとも言えます。全ての人は平等で自由と権利を持つという民主主義の前提条件と現実の乖離に、世界中で民主主義への失望が拡がっています。

静かに国家による管理と独裁の芽が広がっています。

給付金や公的補助、ワクチンなど安心安全のために国民はやすやすと国家の管理を受け入れるでしょう。そこから外れる事はコロナ時代に生活基盤を脅かされる事に直結するからです。大衆に恐怖を煽り、安全を求めさせ、少数の劇的犠牲者を見せしめに社会をコントロールする。新型コロナが示した方法を政治が悪用しない事を願います。

新型コロナがいつ収束するかこの危機を世界が乗り越えられるか分かりませんが、我々は今一度お互いを、人類の叡智を信じて前を向いて進んで行かければならないと思います。

2021年(令和3年)もよろしくお願いいたします。