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多分分かりやすい「新型コロナワクチンの話」

掲載日:2021.01.31

皆さま、こんにちは。
テレビでは新型コロナワクチンの話題が出てきていますね。
新しいウイルスに対する新しいワクチンという事で様々な情報がメディアやネットで出ています。ワクチンそのものはよくわからなくて、副反応の事ばかり気になって不安に感じておられるのではないでしょうか。

今日は院長が新型コロナワクチン(以下新型ワクチン)について、徹底的に勉強したことを、わかりやすく(たぶん)解説していこうと思います!

1)従来型ワクチンと新型ワクチンの違い

・従来型ワクチン

ウイルスや細菌そのもの(病原体)を処理して弱毒化や不活化させたり、他の生物(鶏の卵や牛や馬の血清)を使って作った抗体を使用しています。他の生き物の生成物を使って作ります。
(生物学的プロセスと言います。)
これを体に接種すると免疫細胞が病原体と戦ったりして抗体を作ります。

・新型ワクチン

新型ワクチンではウイルスの遺伝子を全部解析して、「ウイルスの弱点」の部分だけをmRNA(メッセンジャー・アール・エヌ・エー)という設計図にしてワクチンとして接種します。免疫細胞はその設計図を元に抗体を作ります。実際に病原体と戦ったりする必要はありません。

試験に例えて言うなら
・従来型ワクチンは病気の「過去問題や予想問題」を与えて免疫細胞に学習させる。細胞は「自分で考えて」抗体を作らなければいけない。人と同じで学習能力が弱い免疫細胞は「過去問題や予想問題」では抗体を作れない場合もある。
・新型コロナワクチンは「本番の問題と正解」を与える。免疫細胞は「自分で考えなくても100%正解」の抗体が作れるので、「あまり考えなくても」抗体を作ることができる。
試験で言えばカンニングですね。入試ならズルいやり方ですが、ウイルス相手には確実に勝てる方が良いですよね。

2) なんでこんなに早く完成したの?

新型ワクチンは現代科学の賜物
21世紀に入り、人間の全遺伝子の解読が終わったのが2003年。
そこからすでに30年近く
・必要な遺伝子を正確に切り取って組み換えする技術
・解読、設計、分析するスーパーコンピュータの発達

今ではこの2つの技術が「驚異的な進歩」を遂げています。
ウイルスの遺伝子情報は人間に比べて遥かにシンプルですので、あっという間に解析されて「ウイルスの特徴的な弱点」を切り出して設計図を工場で大量生産することができるのです。

生物学的プロセスが入る従来型ワクチンに比べ効果や品質のバラつきがかなり少ない、もちろん従来ワクチンの品質も超高度に管理されていますが、それを超え、いわば超超超高精度の工業製品です。製品の精度が高いため短時間で臨床試験を終えて実用化されました。完全に従来型ワクチンとは違う技術革新とレベルを感じますね。

3) なんでこんなに国が勧めるの?

皆さんは小さい頃からおたふく風邪や水ぼうそう、麻疹など多くのワクチンを義務として定期接種していますよね。おたふく風邪や水ぼうそう、麻疹はコロナのように大流行しているでしょうか?していませんね。これは義務化によって国民ほぼ全てが「集団免疫」を獲得しているため、局地で発症しても拡大しないのです。
また毎年インフルエンザワクチンも多くの人が接種していますが、義務ではありません。集団免疫は国民の一定の割合まで接種が進まないと獲得できません。(今年は新型コロナの影響で当院でも多くの方(1000人以上)がインフルエンザワクチンを接種しに来ましたが、3割は「インフルエンザワクチンは今まで接種したことが無い」とおっしゃられていて、正直びっくりしました。)なので、インフルエンザワクチンがあるにも関わらず、接種しない人がいると流行したりします。
(インフルエンザの予防接種は例年、人口の3割程度で7割の人は接種していません。)

今は政府も国民も新型コロナの流行で苦しい状況ですよね。
だから、早期にワクチンで集団免疫を獲得して日常生活を取り戻したい。
ワクチンを打たない人が多いと、集団免疫の効果が得られなくなり毎年インフルエンザのように大流行を繰り返し、毎年今のような状況になりかねません。できれば義務化されている定期接種の病気のように社会から新型コロナをほとんどなくしたい。
当院も適宜皆さまにお知らせしてまいりますが、不正確な情報やデマなどで不安感だけ大きくなってワクチンを忌避する事が無いようにしたいですね。

4) 効果はどれくらい?

これは院長自身驚いたのですが、「かなり良い」と思います。
ァイザー社、ビオンテック社のワクチンで90〜94%、これは新開発のワクチンとしてはかなり驚異的な数字です。
私たち医師は発売前の臨床試験でこの数字は知っていたのですが、中東のイスラエルでは国民900万人に対しての30%が既にワクチンを接種しましたが、接種後の人たちの中で新型コロナに罹患する率は0.01%、基礎疾患があってもほぼ重症化を防げたというデータが出てきています。また実行再生産数(1人の感染者から何人に感染させているか)も急激に減少して1を切っており収束に向かいそうな勢いで、さらに驚いています。

5) 副作用や後遺症はないの?

一般の方に多いのですが、副反応・副作用・後遺症を混同しておられる方が多いようです。

副反応=ワクチンが入ってきた時に起きる免疫の正常な反応

微熱、腫れ、関節痛、だるさなど→1~数日で改善する

副作用=ワクチンで狙った効果以外に起きる非免疫反応

動悸・注射針による神経障害・血圧低下等

後遺症=上記副作用が永続すること

主作用>>>>>>>>>副反応・副作用・後遺症だからワクチンや薬は利用されます。
新型コロナワクチンでは
・注射の痛み:筋肉注射のためやや痛い
・副反応:一般ワクチンと同じだが、頭痛・だるさなどがやや強い。
・副作用:一般ワクチンと同じ。
・後遺症:後遺症は因果関係の明らかなものはない。

副反応は接種前の健康状態に左右される事が多いですし、体の中でワクチンの免疫反応で学習する状態、いわば予行演習ですので起きても心配いりません。
また、副反応が強めなのも以下のように考えています。

  • 従来型ワクチンは大量の卵にウイルスを投与して抗体を採取するような生物学的プロセスを取るためワクチンのロットごとにある程度のばらつきが生じます。それに比べて「製品のバラつきが極限まで少ない」mRNAワクチンは副反応がバラつきなく揃って出やすい。
  • ワクチンが入って免疫反応が起きて抗体産生までのスピードが早いために副反応も強めに出る。

6) 人間の遺伝子が書き換えられるっていう話があるのですが。

mRNAは人間の生体内でももともと作られるものです。皆さんの皮膚も歯も髪の毛も全部タンパク質でできています。毎日皆さんの体の中でこれらタンパク質を作るためにmRNAは大活躍しています。mRNAは役目を終えるとすぐに分解されますので、自分の遺伝子が書き換えられる心配はありません。
我々のDNAが分厚い教科書で、mRNAは手書きのカンニングペーパーみたいなもの。テストで正解を書き込めても、教科書を変えてしまう力はありません。だいたいテストが終わると
カンニングペーパーはゴミ箱行きです。
社会でもコピーの免許証と本物を同じ様には扱いませんよね。体もきちんとmRNAとDNAを区別する仕組みがあり人間の遺伝子を書き換えてしまうような事はありません。

7) 接種したほうがいいの?

ワクチンの技術的な背景や成り立ち、現在のデータを考えると接種したほうメリットが大きいと思います。

院長は可能な限り早く接種すると思います。

医師として患者さんを守る、院長としてスタッフを守る、社会の見えない誰かとその家族を守るためです。
また、院長が新型コロナワクチンを接種してもピンピンしていたら、皆さんも安心されるのではないでしょうか(笑)

最後に

新型ワクチンは現代技術によって完成した、新しい時代のワクチンです。
鉄道なら電車からリニアモーターカー、電話なら公衆電話からスマートフォン、服で言えば和服から洋服へ、どの時代も大きな技術の転換点があり、その度に人々の生活が大きく変わりました。
医学の世界も初めて天然痘の予防接種が日本で紹介した時にはウシの牛痘を使用したために「接種するとウシになる」とか、レントゲンが発明された時には「悪魔の写真」と言われ非難を浴びました。しかしその後は全く一般的な医療技術となり、人類の健康に大きく貢献しました。

戦国時代で言えば刀から鉄砲に武器が変わったように、我々も今新型コロナを始め、病気に対する武器を持ち換える時代にいるのかもしれません。

ワクチンの接種は最終的には個人それぞれが判断することです。
新しいウイルスに対する新しいワクチンという事で様々な情報がメディアやネットで出ています。それらには「科学的・医学的基礎知識なしに歪められた情報」もかなりありますので、しっかりと正しい情報を元に判断したいですよね。

追記

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